むぎょっていこう

むぎょの日常と遊戯王と腐女子ネタの長文。

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畜生婚儀【即興小説トレーニング】


即興小説トレーニングで書いた作品を手直ししたものです。

 

 

 畜生婚儀

 

 

 祝福の鐘が鳴る。柔らかい日差しに包まれた教会には、主役の親族や友人たちがたくさん集まった。皆一様にハッハッと舌を出し、辺りは獣臭さに満ちている。ダックスフンドの司会と長毛種の神父が現れると、白く眩しい構内は静寂に包まれた。

 遅れて、マルチーズの新郎が拍手で迎え入れられる。ふわふわの毛並みと小柄な体躯は愛くるしい姿だが、堂々とした歩きで威厳を見せ付けた。亭主になる犬としての振る舞いを心得ているようだった。

 二言三言定型の挨拶を済ませれば、一番大きな扉がついに開かれる。招待客は皆一様に首をひねって振り返り、その美しさに嘆息した。

 純白のドレスを纏った新婦が、絨毯の上を進んでいく。腕を組む父親の顔は涙でぐずぐずに崩れていたが、それでも懸命に娘をエスコートした。最後の二足歩行を味わうように、親子はゆっくりゆっくり足を運んだ。

 身長163cmの花嫁は、自らベールを取り払う。ドレスで隠れた膝を折り、たっぷりのレースで膨らんだ腰をかがめ、新郎と同じ四つんばいになった。マルチーズの鼻先に噛み付くようなキスをした瞬間、そこら中から祝いの遠吠えが辺りに響き渡る。愛する夫に寄りそい、共に生きる誓いのキスだった。

 この場でただ一人の人間となった男は、祝いの席から逃げ出した。これから提出する娘の死亡届が、握り締められくしゃくしゃになった。

 

 了

 

 

 

お題:犬の結婚 制限時間:15分 文字数:567

手直し前の作品→「結婚という儀式」 - 即興小説トレーニング